自社にマッチした「生きた」採用要件にする

自社にマッチした「生きた」採用要件にする

採用担当者は、失敗ができないプレッシャーから選考場面で良い人材を見抜きたいと採用基準を上げたり、採用要件を増やしたりといったことを行います。

しかし、できあがった採用要件を見てみると「主体性・実行力・コミュニケーション力」などの抽象的な言葉が並んでしまいます。
採用したいと思う人材が競合他社と似通ってしまい、結果としてどの企業も同じような人材を欲しがるという結果となってしまい、求職者から見た場合の差別化がされていない状態になります。
だからこそ、多くの企業で類似しがちな採用要件を「生きた」自社だけのものにすることが大切なのです。

まず、最初のポイントは、自社の社員の育成に関して現実を把握して、その育成力を採用要件に設定するのです。
つまり、新人が配属される組織の「育成力」の実態把握です。
上司・先輩・同僚の様子、組織の実情を捉えた上で、どのように育ち、育てられていくのか。そこでの成長可能性をイメージしながら採用要件を絞ることが望ましいと思います。

入社後は配属先や育成担当にバトンタッチでは、よい採用は実現できません。
現代の新入社員採用における採用担当者の責任は、入社後3年までと言えます。

例えば、一般的に良く言われる「主体性を持った人物」という要件では、その言葉だけでは面接官は応募者の評価をすることができません。
それは、A社における「主体性」とB社における「主体性」では、意味するところが全く異なっているからです。
それぞれの業態や業務、顧客、企業の歴史や大切にしている価値観・文化・風土、そして今後の企業の方向性などが異なっているからです。
つまり「同じ『主体性』でも他社とはここが違う」「うちでいう『主体性』とはこういうことだ」と、面接官が理解して初めて、まさに「生きた」採用要件となるのです。

次のポイントは、言語化した採用用件を具体的な「こういうこと」というイメージに落し込み、面接官と共有することです。
例えば、ある企業において、採用要件の中に「自律性と主体性」という要件があります。この企業の日常の職場での場面を面接官にイメージしてもらうのです。

それは、スタッフから「この件、どうしたらいいでしょう?」と質問された場面です。
一般的には、そのような質問に対しては「こうしたらいい」「こうしなさい」と指導するでしょう。
しかし、同社の先輩社員の場合、そのスタッフに対して「自分はどう思う?」「どうしたいの?」と反問するのです。
それを初めて体験した新入社員はびっくりします。判らないから聞いたにも関わらず、逆に質問されてしまうからです。

しかし、そこには同社の大切な意味があるのです。
それは、物事には自分の「思い」を持って取り組み、その思いを言葉にできるように昇華して欲しいということなのです。
それが、同社にとって、とても大切にされている価値観であり、そして、同社の採用要件「自律性」「主体性」という言葉の意味することなのです。

このように、ひとつひとつの採用要件について、日常の現場で起こる場面をイメージし共有することで、採用要件がリアルな現場のイメージと強く結びつき実感を伴ったものになります。
そして、意図的にそのような結びつけを行うための場づくりをすることで、ようやく要件が「生きた」基準となっていきます。
面接準備として面接官教育や採用基準の共通化などを施しても、人が人を評価する場面においては、主観的になってしまいがちですが、採用要件と日常の出来事をリンクさせる事で共通認識を高めることができるのです。

さらに、採用要件の設定とその浸透は人材採用の手段としてだけではなく、面接官にとっては、これまでを振り返り自分自身と向き合うことでもあり、組織や仕事に対する考え方を問われることにもなります。
この手続きの中にこそ、内部の社員のモチベーションを高め、組織が一つのベクトルに向かっていくためのきっかけがあるといえるでしょう。
まさに、これは人材採用を通して組織活性化に繋げる成長のスパイラルへの一歩になるのではないでしょうか。

「この会社で働きたい」と思える面接

人は、どうしても相手の第一印象に引きずられ、聴いた話を早め早めに判断して「学生時代にサークルを立ち上げた・・・ ⇒ リーダーシップのある人」と頭の中を整理してしまいがちです。
また、面接官の経験のある方は、ご経験があると思いますが、「あんなに熱く第一志望と語っていたのに、内定辞退なんて・・・」、「面接ではハキハキと元気が良かったのに、入社してみたら・・・」
そういったことの根底には、「人の心理」があげられます。

面接では考え方を聞いてはダメなのです。
人は心理的に「考えを聞かれると平気で嘘をつく」という、特性があります。 それは「その問いに対する最も良い答え」を探そうとするからです。 また、その嘘をつくことへの罪の意識はきわめて低いのです。
面接では、行動事実のみを聞いていきます。人は過去の行動については99%以上の人が、嘘をつくことに抵抗感を感じるのです。

目的は応募者の過去の行動事実を確認することを通じ、行動の中でどれだけ実力を発揮できる人材か、能力をどれだけ成果につなげられるかを測定することにあります。
面接全体を構造化し、質問によって適切な誘導を行なうことによって、行動事実をうまくピックアップするのです。
このような姿勢で面接に臨んでいると、応募者と話しをしていて「なるほど!」「おや??」と思いはじめ、「なぜそんな行動をとったのだろう」と知りたくなります。
そして、「その時にどんなことを思ったのか?」、「そう思うきっかけとなった過去の困った状況や追い詰められた経験は何か?」など、自然と聴きたくなります。

もちろん、どうしても面接の会話だけでは見えづらいものもあります。
よって、別の角度から踏み込んでいる適性検査の情報なども活用しながら、面接者への質問の幅を広げ、内容を深めて、本人理解を進めていくことも大切です。
こうして、その人をもっと知りたいという貪欲さに採用担当者としての視点や姿勢の違いが出ます。

新入社員に「この会社で働きたい」と思える面接について聞いたアンケート結果の第一位は「一人の人間として知ろうとしてくれた」という面接者の姿勢に強く動機づけられていることが分かります。
たとえ不合格だったとしても、このような面接の対応は採用できなかった人の納得感という意味も含め、結果的に企業の採用力として大きな差がつきます。
合否結果はいずれであれ「あの面接では、自分のことを十分に引き出して理解してくれた。その結果なら・・」と思ってもらえることが大切なのです。

人材採用の難しい今だからこそ、これまで以上に採用活動を通じて社員や組織が元気になり、そして応募者にも元気を与えられるような工程で採用担当者が取り組むことが求められていると思います。

では!また。

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