褒めて伸ばすというのは部下をおだてることではありません

褒めて伸ばすというのは部下をおだてることではありません

褒めて伸ばすというのは、多くの人が認識している人財育成のコツです。
コーチングでも「褒めて伸ばす」というのは定番として語られます。
これは、ピグマリオン効果と呼ばれ、教育心理学における心理的行動のひとつです。

教師の期待によって学習する生徒の成績が向上することがあるそうです。
簡単に言うと、「人は常に相手の期待に対し最も敏感に反応する」ため、相手対して期待をもち、その相手の長所を伸ばそうという温かい態度で接していれば、相手も自分にあった望ましい方向に伸びていく可能性があるということなのです。

ただし、なんでも褒めれば良いかと言いますと、そんなことはなく、そこには褒め方のポイントがあり、それを誤りますと却って「ほめ方によっては、能力を伸ばすどころか、相手をダメにしてしまう場合もある」のです。

危険なほめ方とは、褒める対象を相手の「能力」とするほめ方です。
例えば、テストの結果がよい子どもに対し、その点数を褒めると、その子は「良い結果を出さないと褒めてくれない」「成功しないと褒めてくれない」と受け取り、点数が取れなかった場合の挫折感が強くなってしまうのです。
そして、自分の能力を疑うようになり、自信とやる気を喪失していくのです。

しかし、相手の「能力」ではなく「努力」をほめるようにすると、結果は違ってきます。
努力をほめられた子どもは、約9割が、新しいことにチャレンジすることを好んで、学べるチャンスを逃さなくなり、どんどん成長していきます。
つまり、能力をほめると子どもの知能は下がり、努力をほめるとこどもの知能は上がるのです。

部下育成においても、そのポイントはもちろん同じでしょう。

新人アルバイトが入店した際に最初は戦力になる合格ラインを超えた人のはずです。
本人も、期待に胸をふくらませて仕事に取り組み始めることでしょう。
その、入店した優秀な新人アルバイトにこれからしっかりと現場の仕事を学んで成長してもらうために、大切なことがあります。
どんなに優秀な方が入ってきても、最初の時点で100点は取れないということです。
新人アルバイトの評価シートで、新人を卒業できる点数が、仮に80点だとすれば、その点数になるためには時間が必要になります。
その中で、点数が40点にステップアップしたアルバイトを褒めることができるでしょうか。

40点です。通常であれば決して褒めることのできない点数だと思います。
そのため、この20点から40点に成長したアルバイトを褒めることができない会社が多いのです
この40点になったアルバイト、いわゆる20点から40点へと20点分成長したアルバイトをおおいに褒める仕組みが必要なのです。

「君は20点の成長をした素晴しいアルバイトである」

褒められたそのアルバイトは戸惑うかもしれません。
学校では決して褒めてもらうことのできない点数です。
しかし社会は違います。最初は低い評価点数からスタートするのです。
それでいいのです。「すべてのアルバイトはそこからスタートした。そして一段ずつ階段を登るように成長して優秀なアルバイトになった。だから焦る必要はない。ゆっくりと成長していくことだよ」というメッセージを送らなければなりません。

小さな成長を褒めてもらうことができる。こんな会社であれば新人アルバイトは成長していきます。
その考えを可視化した仕組みが人事制度なのです。

また、企業研修で「人を褒めてくださいね。いくつになっても、褒められるとうれしいものですよ」といった指導をすることがあります。
そこで必ずといっていいほど出る意見が「部下をおだてたり、お世辞を言わなくては働いてくれないものなのでしょうか?」というものです。
このような疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
「おだてる」・「お世辞」・「褒める」この3つの単語のニュアンスは似ていますが、実際の意味は大きく違います。具体的に、どう違うのか下記に記します。

1)おだてる【▼煽てる】
あることをさせようという意図をもって、人を盛んにほめていい気にさせる。

2)おせじ【▽御世辞】
相手の機嫌をとろうとしていう、口先だけのほめ言葉。お追従(ついしよう)。

3)ほめる【▽誉める/褒める】
高く評価していると、口に出して言う。たたえる。
「よく頑張ったと―・められる」「上手な字だとみんなが―・める」
祝う。祝福する。

言葉の本来の意味を調べますと、「おだてる」や「お世辞を言う」ことは、「あることをさせようという意図をもって」することであったり「機嫌をとろうと」するものだったりと、行動の裏に相手を操作しようとする意図があるようです。
それに対して、「褒めること」は相手をたたえたり、祝い、祝福する純粋な気持ちから来る行動です。

つまり、褒めることとは、心から「あなたはすばらしい」と純粋に伝えることが褒めることなのです。
なんでもかんでも無理に褒めようとすると、おだてたり、お世辞を言うことに繋がります。言われた方としても、心にも無い事を言われても嬉しくないのは当然です。

教師やトレーナーなどの人を育てる仕事に従事している人の鉄則として「叱る時は人間性を否定してはならない」人間性を指摘するのではなく、問題がある行動のみをピンポイントで叱るとあります。
また、ほめる時のコツも具体的に「○○を褒める」事です。

つまり、行動を具体的に褒めるとは、例えるなら、このようになります。
×「山田さん、最近がんばっているね!」○「山田さんの接客で先ほどお客さんが笑顔になっていたよ」

具体的な行動を褒めるとなると、上司は絶えず部下の一挙手一投足に関心を払わなければなりません。
なぜならば、しっかりと相手に関心を向けていないと、結果的にあいまいな褒め方になってしまい、それは確実に相手に伝わってしまうからです。
褒められることで得られる一番のメリットは、部下が「自分の上司は、ちゃんと見てくれているな」という気持ちになれることなのです。
的確に部下を褒めることができれば、そのモチベーションがみるみる上がっていくのも当然の結果なのです。

人が生きていくうえでもっとも大切な感情は「自己肯定感」です。
自己肯定感を育み、自主性をいかにしてもたせるかということが大切なのです。

では!また。

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