これからの人事部は経営のベストパートナーを目指す

人事部とは何か?何をする所か?
この問いに対する答えは難解で複雑に見えますが、実は極めて単純に答えることができるのです。
それは、創業時に社長が業務拡大する際にした業務をイメージすれば良いのです。

■人事部三つの役割(採用・人材開発・退職)
起業した場合、多くの社長は一人もしくは少人数で仕事をこなしていきますが、規模の拡大と共に人材が必要になってきます。
その時に社長がすることは「良い人材を獲得する」ことです。
良い人材とは、社長の夢に共感し、共に夢の実現に向けて力になってくれそうな人物の事です。
これが「採用」活動です。
この時に社長は全身全霊で夢を語り、その夢を共感できる人か判断する完全個別対応の採用活動なのです。

その後、採用した人物の業務がスタートし役割分担が遂行されていきます。また、順調に業務拡大した場合、その人材採用は一人二人と増えていきます。
採用した人材の実務が始まりますと、社長は個々人に教育を施します。企業理念やビジョンを繰り返し語り、してはいけないことや行動の優先順位等の価値規範を示します。
これが「人材開発」活動です。
企業業績を高められるように、社長がマンツーマンで個々人をブラッシュアップするのです。

なお、経済的・精神的コストを多大に掛けて、採用し人材開発するのですが、環境変化によって、人と組織のミスマッチは発生します。
これは業容拡大による経営戦略変更が生じて、社員がその変更にキャッチアップできない場合などで、その場合は社員の退職が発生します。
その時に社長が心がけることは、自己都合であれ会社都合であれ、退職後も自社のファンであり続けてもらうために、個別に面談し、しっかりと理解し合う話し合いを行う事です。
これが「退職」活動です。

このように、創業社長は社員の「採用・人材開発・退職」の全ての場面で、時間をかけてじっくりと話し合い、マンツーマンで人の問題に対処します。
それは、人と組織の問題は事業の継続を左右する経営の最大問題だからです。

この創業社長が行っていた実務を人事部は引き継ぎ実施しなくてはいけないのです。

■人事業務の分業化による弊害
創業当時は社長が一人で行っていた人事業務を規模の拡大と共に人事部に引き継ぐのですが、この時に「業務の形式化」という問題が発生します。
「採用」活動においては「自社にとって良い人材を獲得する」という目的の下、社長の夢に共感し、共に夢の実現に向けて力になってくれそうな人物を口説いていたものが、面接官の主観で採否が決まってしまったり、採用難の直近に至っては数あわせの採用が行われたりします。
「人材開発」活動においては、企業業績を高められるように、社長が現場で起こった問題点や今後起こりそうな不具合について教育し、マンツーマンで個々人をブラッシュアップしていましたが、形式化が進みますと固定的で一律的な階層別研修やそれに準じたパッケージ研修を実施するようになります。
「退職」活動においては、創業時の社長は組織からの出口に当たる退職の場面において、自分自身の目と耳と感性で口説き落として採用した社員ですから、たとえ退職が避けられないとしても採用した自分の責任として、良い関係のままで別れるように話し合いをしますが、分業によって退職処理という事務手続きで終了してしまうようになってしまうのです。

■戦略人事のススメ
経営のベストパートナーとしての人事部に向けて「戦略人事」の考え方は必須となります。
その「戦略人事」とは?
戦略的な視点で人事(組織作り、人材育成など)を考え、経営陣と現場をつなぐ架け橋の役割を担う事を言います。
この「戦略人事」の対極にありますのが、前述いたしました形式化した人事業務で、これを「機能人事」と言います。ルーティンワークとしての機能人事業務は、当然、必要なのですが、本来、戦略的に機能しなくてはいけない部分についても形式化した不活性な状態になっていますと、人事部の本来の目的である「人と組織に関する問題解決」を支援する立場にならないのです。

戦略人事における人事部メンバーは経営陣の考えをわかりやすくかみ砕いて現場に伝えると共に、現場から上がってくる声の中から「本質」を見抜いて、その内容を経営陣に提言していく必要があります。
具体的には人事部メンバーは各現場に足を運び、各現場でのマネジメントの特徴を把握し、社員の定着における人材開発を推進するために、現場リーダーを支援するフィールドワークに時間とエネルギーを割くのです。

現場リーダーを支援するフィールドワークが確立されることで、人と組織に関する問題発見と課題解決方法が見えてきます。
また、個別対応を基本とすることで現場リーダーだけでなく一般社員からの支持も得られます。
この現場の問題点と課題解決策をベースとした「採用・人材開発・退職」業務が確立したならば、それは、間違いなく経営のベストパートナーとしての人事部になります。
経営陣が、最も必要としているのは「社員のやる気の結集」だからです。

では!また。

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