「キャリアアップ」を理由に辞める若い社員を考える

「キャリアアップ」を理由に辞める若い社員を考える

まず「キャリアアップ」とは何でしょう?
キャリアと言うと経歴や仕事・職種・役職みたいなものに焦点が当たっていることが多いです。
だから、有名な上場企業のマネージャー職自体が「キャリア」になると考えがちです。

しかし、実際は、その役職を通し、何を経験し、どんな能力を身につけていくのか?を考えることがキャリア形成なのです。
つまり、どんなものでもキャリアになりうるし、それは、蓄積して溜まっていくものなのです。
その認識ができないでいると、環境と仕事を変えれば、キャリアアップできるという「幻想」に取りつかれることになります。
つまり、幻想を追いかけ続けるので、不安や違和感を拭い去れないままでいる人が増えているのです。

本来、自分の中に「自分のキャリアをどうするか」という問いとそれを模索していく過程があるべきなのに、誰かからその答えをもらえると思ってしまう。
キャリアというのはそもそもゼロから始まり、自分で継続して築き、積み重ねていく、答えのないものです。
キャリアに答えがあると思っている人は幻想にとらわれているのです。

では、そのような人たちが増える中で、上司は何を考えていけばいいのか?

キャリア形成は積み重ねなので「目の前にあるこれをやっていたらどうなるのだろう?」「これを身につけて、自分はどうなりたいか?」という事を自分自身で考えることが大変重要なのです。
そこで、上司自身の経験から導き出された「答え・正解」を伝えることは簡単です。
しかし、それでは部下は「答え・正解」が無いと動き出せない社員になってしまいます。

それゆえに、上司は部下に対して「理想」をイメージさせることが大切になるのです。
「これをすることで、3ヶ月後に何が身に付いていたらいいと思う?」と、この理想のイメージを本人に考えてもらうのです。

しかし、部下は「これをずっとやり続けても成長が感じられると思えません」と言うかもしれません。
上司のあなたは、答えを急がずに「敢えていうなら何が身に付きそう?」と、更に問うのです。
そうすると部下は「計算が早くなるかもしれません」と答えるかもしれません。
更に上司のあなたは「計算が早くなると、どういうことが起きる?」と問い続けるのです。

実は「キャリアアップが望めない」という理由で辞めるという人の大半は自分の理想が分かっていないのです。

そして、理想が無いこと、答えが得られないことを環境や他人のせいにしているだけなのです。
だからこそ、理想は、自分で作るものだということに気づかせ、理想を取りに行く習慣をつけてもらわなくてはいけないのです。

そのように理想もなく、漠然としたイメージに振り回されて不安を感じている人たちは、身の回りで起こったちょっとした人間関係のいざこざや仕事の失敗、お給料などに不満や嫌な理由を積み重ねていき、そして、次の環境に仕事を求めて、離れていくのです。
そんな悪循環に陥らないためには「成長への道筋をわかりやすく示す」ことです。

■成長への道筋をわかりやすく示す
「この会社に留まり続けることで自分が成長できそうだ」という期待感が大切なのです。
仕事そのものの魅力だけでなく、新人の育成を支援する仕組みが整っているかどうかを若手社員は大切に考えています。

若手社員にとっての成長期待を高めるには、キャリアのゴールと育成のステップを具体化し、どのような仕事経験や知識・スキルを身に付けていけば、ステップアップしていくのか道筋を見えるようにすることが不可欠です。
また、新人が即戦力として活躍できるようにするための教育プログラムの充実や仕事に役立つナレッジの共有も欠かせません。
本来、このような育成プログラムやキャリア開発プランは、社員個人が自律的に成長できるサイクルに乗ってしまえば、さほど重要ではなくなりますが、キャリアは予期しない偶然の出来事によってその80%が形成されるともいわれています。

優秀な人ほど、自分なりの好奇心や問題意識を持って、多種多様な知識を吸収し、活躍の幅を広げていくものです。
ただし、その域にまだ達していない社員は、仕事を一人前にこなすために必要な情報や技能を持たず、常に不安を抱えており、仕事の先にある意義や価値も感じ取れない場合が多いのです。
育成プログラムやキャリア開発プランは、こうした社員を自律的に成長できる軌道に乗せるための仕掛けとしてとらえる必要があります。
現場で必要な知識を体系的・網羅的に定義するというよりは、「何をどのような順番で取り組んでいけばよいか」がわかりやすく伝わるような内容にデザインすることが重要です。

また、仕事の遂行に必要なインプット(知識・技能)だけでなく「この仕事から何が学べるのか(学ぶべきなのか)」を再定義することによって、「あらゆる職務場面において学ぶ機会はたくさんある」という意識を持たせることが課題となります。

これが実現すれば、キャリアアップを理由とした退職を防止することができ、かつ、若手社員が目的意識を持って自律的に日々の業務に取り組むことができるのです。

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