釘師サブやんに憧れてホール企業に就職

釘師サブやんに憧れてホール企業に就職

30年以上に亘り多くのパチンコ業界人を取材してきたが、最近取材した副店長には久しぶりに驚かされた。

不惑の年を迎え、現役でホール現場に立っているのだが、中学生の頃からパチンコ業界に入りたいという夢を持っていたのだ。その年でパチンコ業界に興味を持ったことにまずビックリした。

両親がパチンコ好きだった。そんな環境で育ったために、中学生の頃からパチンコを打つようになった。当時は、18歳未満の立ち入りが厳しく取り締まられていなかった、という時代背景もある。

マイホールで仲良くなったのが、“さすらいの釘師”だった。当時の愛読書は「釘師サブやん」。不朽のパチンコ漫画の傑作である。

「おい、坊主、釘師はハンマー一つで儲かるぞ」

漫画の世界と現実が入り交じり、いつしか、釘師に憧れるようになった。

釘師と仲良くなり、廃棄する台をもらい、ゲージ棒とハンマーを揃えた。自分の部屋にセル板を取り付け、漫画片手に独学で釘調整の勉強を始める。それぐらい釘師になりたいという想いが強くなる。

高校3年生で進路を決める時期になった。先生にはハッキリと「釘師になりたい」と相談した。高校生で釘師になりたいと思う人が全国にどれぐらいいただろうか? 

ホール企業を就職先として選ぶ理由は「パチンコが好き」「接客業が好き」、「サービス業が好き」「店長で1000万円の年収を稼ぎたい」等など。長年の取材を通しても「釘師になりたい」というのは初耳だった。

相談を受けた先生も困った。この高校からホール企業へ就職した前例がいない。もちろん、ホール企業からの求人票も来たことがない。学校にルートはなかった。

そこで、他校でホール企業へ就職しているルートを探し出して、生徒にそのホール企業を紹介する。

面接では志望動機として、「釘師になりたいこと」を訴えた。面接担当者も初めての志望動機に面食らいながらも、やる気を感じた。面接の際に、釘の叩き方を質問している。たまたま面接官が釘を叩く立場の人だったので、「真っすぐ叩くことがポイント」とアドバイスを受ける。

もちろん、採用である。

新卒で入社しても、事あるごとに釘師になりたいことをアピールし続けた。

念願が叶って入社3年目で釘担当になった。好きこそものの上手なり。釘を叩くセンスが光った。

憧れた全国のホールを渡り歩くさすらいの釘師ではないが、釘が叩ける夢は果たすことができた。

「開けているように見せて、実は入りにくい。閉めているように見えて、実は入る。そんな駆け引きをお客さんとすることが釘師の醍醐味」

今や釘調整は違法とされ、公に釘を語ることが憚れる。釘学校もなくなり、憧れだった釘師と言う職業もなくなろうとしている。

釘がタブー視されることで、釘の技術もどんどん劣化する。名人芸のような遊ばせる釘ができないことが客離れに拍車をかける。

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