乳幼児用保育所を作った業界の女社長
今年4月1日、セガサミーホールディングスが社員の仕事と子育ての両立支援を目指して企業内保育所「セガサミー そらもり保育園」を開設した。対象は生後2カ月後から2歳児まで。社員やアルバイトでも利用できる。
ついにパチンコ業界内でも企業内保育所がスタートする日が来た。彼女の8年前の想いが実現する日が来た。
彼女は24歳で会社を興した。理由は以前勤めていたコンサルティング会社が倒産寸前だったため。必要に駆られて業界向けの社員研修会社を立ち上げた。
一人で仕事をこなす分には非常に優秀で、何でも完璧にできた。ただ、他人に仕事を任せることができない性格だった。
大口の固定客も獲得した。人材が育たないまま7年が経過していた。それでも会社は回った。
「いつでも会社をたたむポジションにいたかった。人材が育たないことをいい人がいない、と言い訳にしていた」と振り返る。
研修を担当したホールのグランドオープンの日。
当初はバラバラだったホールスタッフが一致団結して見事にグランドオープンを成功させた。みんなが涙して喜んでいる姿を見て、仕掛け人なのに羨ましかった。
その時、自分の体に付けていた鎧が、目から鱗が落ちるように剥がれ落ちるのを感じた。
「忙しすぎるのも、人が育たないのもすべて自分のせい」
頭では分かっていたことだが、この時ハートで気づいた。
社長の意識が変わった時、売り上げは3割アップした。気持ちが変われば行動も変わる。社員に仕事を任せられるようになった。
「チャレンジして失敗するのは価値がある」
今では自分の体験を通して組織作りの講演ができるようになった。
がむしゃらに走り続けてきた女性社長。仕事が恋人かと思っていたが、アラフォーにリーチがかかって来た時に、突如結婚して出産も終えた。
出産、育児のために1年間は会社のことがお留守になりがちだった。それでも乳飲み子をかかえ出張にも出かけたこともある。
子育てをしながら社長業もこなした。しかし、2歳児未満の乳幼児を預かってくれる保育所はどこも定員オーバー。空きがあったとしても、都内ではかなり高額な料金を取られる。これでは何のために子供を預けて働いているのか分からない。
匿名ブログで話題になった「保育園落ちた日本死ね」問題を自らが7年前に実体験していた。
ここからが行動力のある女性社長の真骨頂である。
「自分のように困っている母親は多いはず。働く母親を支援したい」とばかりに今度は自分で、0~2歳児までの保育所を都内に開設してしまった。
時間的な関係で、都の認可を受けることはできなかった。
0歳児3人に対して1人の保育士をつけなければいけない、床面積の1/5は採光が必要で、そのためには建物の壁を壊して窓にしなければいけない、2方向の避難経路確保の義務など細かな規定が多く、とても儲かるビジネスではないが、それでもやってしまったのは、自分自身の必要性も強く感じたからだ。
企業内保育の分野にも進出して母親が安心して働ける環境作りをサポートしていく構えだ。
必要に駆られる——こんなところに事業のヒントはある。